IR2110の独り言

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国際展示場駅前のVVVF波形を評価してみた

今日はわくわく!コミケの日!国際展示場駅前を歩いていると…

おや!なにやら怪しいものが…!(図1)

図1 怪しい地面

これは見るからにインバータの波形…!

コミケの風物詩とも言っていいこの床。PFM波形だ〜とツイートするのはいいのですが、基本波成分やTHD解析がなされている文献は見当たりません。(僕が見てないだけかもしれない)

て〜かそもそもなんでいきなりここにPFM波形があるのか?真意は謎ですが、いろいろ気になるので、ちょいと解析をかけてみましょう。

ガバ〜く解析していく!

●スイッチングの読み取り

幸い国際展示場と学校が近いので、帰るときに国際展示場駅を経由してマス目を数えていきます。図2のようにGoogleMapからもギリギリ見れるのですが、ちょっとボヤけてて見えづらく、正確に読み取るのは難しいです。直接出向くのがやはり確実でしょう。

図2 国際展示場駅前の航空写真(GoogleMapより)

マス目は、図3のように青色を1、黒色を0として順番に読み取って行きました。ちなみに一緒に数える友達なぞいません。

図3 マス目の数え方

このようにして読み取った波形を図4に示します。マス目は全部で1000マスくらいで15分とかで終わったので、別に友達とかいらんかったかもしれません。

図4 国際展示場駅前から読み取った波形

●解析法について

まず、図4の波形を3相2レベルインバータの相電圧と仮定し、 0 \Rightarrow -E 1 \Rightarrow Eとして気持ち的に置き換えます。( Eはインバータの母線電圧)

▶︎不連続!非対称!

波形をよく見るとわかるのですが、波形が毎回異なっており、通常の同期PWMのように解析できない感じがします。また、どう見ても直流バイアスがかかってる感じで、ゼロクロス点で非対称です。それに加え、波形の端も変なタイミングで終わっており、連続させることができないことから、波形全体をドーンってフーリエ級数展開するのも無理がありそうです。

▶︎ガバ〜く解析

図4の波形を図5のように適当に区間に分け、0度から90度のスイッチング角度を入れると各種解析をしてくれる自作ソフトにぶち込みそれらの結果を平均することでだいたいの値を得ることにしました。この方法では、波形が対称かつ3相で平衡していると仮定しており、これは実際とは異なります。それに端っことかも解析できていないのですが、あくまでガバ〜く解析ってことなので気にしてはいけません。
解析法に関しては、かなり悩みました。波形に直流バイアス成分が乗っているように見えることから、ここら辺を補正して解析しようとも思いましたが、この波形の製作者をなるべく尊重し、THDが少なくなりそうな解析法で攻めることにしました。

図5 波形を分割して解析

スイッチング角度に基づいて解析する方法は前回の記事と同様です。ただし、今回は前回と違って2レベル波形ですので、 N角度の2レベル波形の n次高調波の振幅 H(n)は次式になります。( E=1として正規化しています。)

 H(n) = \dfrac{4}{n} \{ 1-2(\cos n\alpha_{1} - \cos n\alpha_{2}

 + \cos n\alpha_{3}... \cos n\alpha_{N}) \} \tag{eq.1}

●パルス数を求める

基本波振幅を求める前に、まずパルス数を求めます。スイッチングが図5の赤枠の範囲内で切り替わる回数を数えると、合計 444回となります。また、赤枠は 8.25周期分ありますから、パルス数は 444\times 2 \div 8.25 \fallingdotseq 26.91パルスとなります。

●基本波振幅を求める

図5の赤枠でそれぞれ求めた H(1)をすべて平均すると、 \overline{H(1)}\fallingdotseq 76.6\%となりました。1パルスを100\%として正規化すると、60.2\%となります。また、最小値は H_{min}(1) \fallingdotseq 62.0\%で、最大値は H_{max}(1) \fallingdotseq 90.6\%となりました。けっこう幅があります…。

●THDを求める

電流THDI_{THD}の解析方法は前回の記事と同様ですので省略します。

図5の赤枠でそれぞれ求めた I_{THD}をすべて平均すると、 \overline{ I_{THD} } \fallingdotseq 4.45\%となりました。また、最小値は I_{THDmin} \fallingdotseq 2.64\%で、最大値は I_{THDmax} \fallingdotseq 7.70\%となりました。さらに幅があります…。本当に大丈夫ですかねこれ。(大丈夫じゃない)

●サブ・ハーモニックPWMと比較

▶︎27パルスと比較

とりあえず、パルス数(スイッチング回数)がほぼ同じな27パルスと比較していきます。 H(1)  \fallingdotseq 76.6\%時の27パルスの線間電圧波形を図6に示します。

図6 27パルスの線間電圧

この波形の電流THDを求めると I_{THD} \fallingdotseq1.89\%となり、最小THD I_{THDmin} \fallingdotseq 2.64\%と比較しても、サブ・ハーモニックPWMの波形のほうが品質が優れていることがわかります。一応変調率を変えて H_{min}(1) \sim H_{max}(1)でも比較してみましたが、この関係が覆ることはありませんでした。

▶︎なるべく同等の品質となるパルス数

まず、 \overline{ I_{THD} } \fallingdotseq 4.45\%となるべく近くなるようなパルス数を求めます。パルス数は、諸事情で3の奇数倍のみに制限します。求めてみると、 I_{THD} \fallingdotseq 3.44\% 15パルスとなります。

また、 I_{THDmin} \fallingdotseq 2.64\%と同等の品質となるパルス数は、 I_{THD} \fallingdotseq 2.44\%21パルスです。
最悪の場合である I_{THDmax} \fallingdotseq 7.70\%と同等の品質となるパルス数は I_{THD} \fallingdotseq 5.59\%9パルスとなります。ちなみに、3パルスは I_{THD} \fallingdotseq 11.7\%となっており、もう少しで3パルスの顔が見えそうな感じになっております。

●まとめ

図5の波形は、以下のような素晴らしい特徴があります。

  • 正弦波に直流バイアスっぽいのがかかってる
  • 毎回波形が違う
  • 最高のパフォーマンスを発揮できても、性能はサブ・ハーモニックPWMに届かず
  • 最悪の場合3パルスの顔がチラつく

解析した感想ですが、これがそもそもインバータの波形として作られていないというのもあり、かなり解析しづらかったです。全然完璧に解析できたわけではないので、何か良い方法を思いついた人は教えてください。