弊学の廊下を歩いていると…
おや!なにやら怪しいものが…!(図1)
これは見るからにインバータの波形…!!!
上に電圧形2レベル三相インバータの回路が書いてあるので、三相インバータ関連の波形でしょうか?
どうやらこのポスター、話によるとワイの担任が作ったそうです。研究室前に貼ってありました。なんで作ったのかは真意は謎ですが、いろいろ気になるので、ちょいと解析をかけてみましょう。
ゆる〜く解析していく!
スイッチング角度の読み取り
同期PWMとして解析を行います。まず図2の要領で図1のスイッチング角度を読み取ります。
同期PWMの波形は対称なので、周期分を読み取れば良いのです。写真のピクセル数から角度を読み取っていくと、以下の表1のように読み取ることができました。なお写真の傾きについては補正をかけていません。…どうせそんな変わらんやろ!
表1 スイッチング角度
番号 | 角度 [deg] |
---|---|
8.48 | |
12.5 | |
17.7 | |
24.7 | |
29.5 | |
37.3 | |
43.5 | |
55.0 | |
60.9 | |
75.6 | |
81.2 |
基本波振幅の導出
図2の波形をフーリエ級数展開をするときの要領で図1の波形が連続するとしてフーリエ級数展開を適用すると、次高調波の振幅は(eq.1)になります。(母線電圧=1として正規化しています。)
(eq.1)から、図1の波形の基本波振幅となり、1パルスモードの基本波振幅をとして正規化すると、となります。
なお、写真には基本波らしき正弦波が一緒に描かれていて、これの振幅をピクセル数から読み取ると、となり、と比べると、近くの誤差があることがわかります。
というのを踏まえて基本波の正弦波を赤線で描くと、図3のようになります。
また、3倍調波が0ではないことから、PWM波形は3レベルインバータの相電圧であることがわかります。2レベルインバータの線間電圧には3倍調波は含まれないはずだからです。
上に描いてある回路は2レベルだということを考慮すると、2レベルインバータの線間電圧のつもりで描いたのでしょうか。
THDの導出
電流THDは、電動機一相あたり実効漏れインダクタンスを、基本波角周波数をとすると、(eq.2)となります。
図1の波形は対称なので、次高調波は除いて考えると、となります。また、線間電圧を考えると、次高調波は除去されるのでとなります。これが小さいほど、よいPWM波形だと言えます。
ベクトル軌跡の導出
電圧を時間積分して電流0時の磁束の軌跡っぽいものを出してみます。図4のようになりました。
理想ではこの形は円になります。円形に近いほど、リプルが少ないと言えます。
サブハーモニック法と比較
一般的なサブハーモニック法のPWM波形と比べてみましょう。21パルスモードでの相電圧の波形は図4のようになります。角度の数は11角度で図1とちゃんと一緒です。
THDを出してみましょう。まず、図5の波形(相電圧)はとなり、線間電圧を考えると、次高調波は除去されるのでとなります。
これは、先ほど導出したより数倍小さいです。つまり、図1の波形は、一般的なサブハーモニック法よりはるかに劣っているPWM波形だと言えます。
磁束の軌跡っぽい形も比べてみましょう。図6にそれぞれの磁束の軌跡っぽい形を示します。左側が先ほど導出した図1の磁束の軌跡っぽいもの、右側が21パルスモードの磁束の軌跡っぽいものです。
図6からも図1の波形が一般的なサブハーモニック法に比べてはるかに劣っているPWM波形だということが分かります。
なるべく同等な評価結果となるようなパルス数を求めると、9パルス(キャリア反転、4角度)のとなりました。(これでも1歩及ばず…)つまり、図1の波形は〜以下のスイッチング周波数のサブハーモニック法と同等くらいの品質なのです。例えるならば、「人一倍以上努力しないと1人前になれない」みたいなことです。
まとめ
図1の波形は、以下のような素晴らしい特徴があります。
- 11角度
- 基本波振幅がくらい違う
- 2レベルインバータの線間電圧のつもり
- 3レベルインバータの相電圧
- 人一倍以上努力しないと1人前になれない
今後の活躍に期待です。